小児期発症の胆汁うっ滞性肝疾患には、胆道閉鎖症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、良性反復性肝内胆汁うっ滞症、アラジール症候群、シトリン欠損症、Dubin-Johnson症候群、胆汁酸代謝異常症、α1アンチトリプシン欠損症などの疾患が含まれます。
これらの疾患の中には、乳幼児期に早期診断・治療がなされなければ肝不全から死に至りうる予後不良の疾患が多く存在しています。
しかし、診断には保険未収載の特殊検査や専門的な知識・経験が必要であるため、適切な診断・治療時期を逸してしまう症例が少なくありませんでした。
また、これらの希少疾患群の新規診断・治療法を開発するためには、全国の症例の情報を集約する必要があり、症例の臨床情報や検査データを継続的に登録・収集するレジストリシステムが有用です。
しかし、これらの疾患群の中で最も発症頻度が高い胆道閉鎖症については、レジストリ研究(厚生労働省 難治性疾患政策研究事業 胆道閉鎖症全国登録事業)が現在進行中ですが、他の疾患群については、その希少度(胆道閉鎖症患者の1/10〜1/00以下)ゆえにレジストリシステムが存在しません。
さらに、当該疾患群の症例数はとても少ないため、血液や尿などの生体サンプルはとても貴重です。
来るべき医学研究のためにあらかじめ生体サンプルを収集・保管するバイオレポジトリは、既にイギリスやアメリカでは開始されており、実際に研究成果も出始めています。
しかしながら、それぞれの疾患には日本人特有の要素(遺伝要因、環境要因など)が多くあることから、日本でも独自のシステムを構築することが重要でした。