進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)

Progressive familial intrahepatic cholestasis


良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)

Benign recurrent intrahepatic cholestasis


進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(Progressive familial intrahepatic cholestasis; PFIC)は、先天性の肝臓内での胆汁うっ滞症(肝内胆汁うっ滞症)です。すべて常染色体劣性遺伝形式であり、これまでは1型から 3型の3病型に分類されていました。

近年の遺伝学的解析技法の進歩により新たな責任遺伝子が発見され、現在は6病型に大別されるようになりました。1〜3型のPFICでは、肝臓内の細胆管の胆汁輸送を担う部分(トランスポーター)の異常によって胆汁うっ滞をきたします。 

良性反復性肝内胆汁うっ滞症(Benign recurrent intrahepatic cholestasis; BRIC)は、普段は黄疸(皮膚が黄色くなること)はありませんが、手術や感染などをきっかけに黄疸や痒みが出現し、しばらく継続した後に自然軽快するエピソードを繰り返します。

BRICはPFICの軽症例と考えられていますが、一部の症例ではPFICの様に長期的に肝線維化を来す症例もあり、両疾患をはっきりと区別することは難しいと考えられています。

疫学

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 世界的には、5〜10万出生に1名の割合で発症し、小児胆汁うっ滞性肝疾患の10-15%を占めると推測されています。一方で、本邦では症例報告が散見されるのみであり、正確なデータはありません。

原因

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<PFIC1>
PFIC1 は、familial intrahepatic cholestasis 1 (FIC1)蛋白に対応するATP8B1 遺伝子変異によって発症します。FIC1蛋白の異常は、肝細胞、小腸細胞において胆汁酸代謝の異常(核内受容体FXRの発現低下)をきたします。肝臓でのFXRの発現低下は、肝内で胆汁酸を輸送する役割を担うBSEPの発現低下を引き起こし、胆汁分泌を妨げると考えられています。なお、Byler's diseaseは、PFIC1と同じ疾患です。

<PFIC2>
PFIC2 は、肝内で胆汁酸を輸送する役割を担うBSEP (bile salt export pump)蛋白に対応する ABCB11 遺伝子変異によって発症します。BSEP蛋白は肝細胞の毛細胆管膜に存在します。BSEP蛋白の異常では、肝細胞から胆管内に胆汁酸を分泌できなくなり、胆汁酸が肝臓内に蓄積し、巨細胞性肝炎を引き起こし、胆汁うっ滞をきたします。

<PFIC3>
PFIC3 は、MDR3 (multi drug resistance 3) P糖蛋白に対応する ABCB4 遺伝子の変異によって発症します。MDR3蛋白の異常により、胆汁中のリン脂質が不足すると、胆汁酸のミセル形成ができなくなり、胆管上皮や胆管細胞に傷害をきたすと考えられています。

<PFIC4>
PFIC4は、ZO-2 (tight junction protein 2)に対応する TJP2 遺伝子の変異によって発症します。ZO-2蛋白は上皮及び内皮細胞間の接合部組織に関係するため、ZO-2蛋白に異常が起こると、肝臓の血漿から胆汁の分離に障害をきたすと考えられています。

<PFIC5>
PFIC5は、FXR (frnesoid X receptor)に対応する NR1H4遺伝子の変異によって発症します。肝臓でのFXRの異常は、胆汁酸トランスポーターBSEPの発現低下を引き起こし、胆汁分泌を妨げると考えられています。

<PFIC6>
PFIC6は、MYO5Bに対応する MYO5B遺伝子の変異によって発症します。詳細な機序は不明ですが、MYO5Bの発現低下によって肝細胞の毛細胆管膜タンパクの誤局在が誘発され、胆汁輸送障害が生じると考えられています。

<BRIC>
BRICはPFICと同じ部分の遺伝子異常が原因です。つまり、BRIC1ではATP8B1 遺伝子、BRIC2ではABCB11 遺伝子の変異を認めます。健康時には症状を認めない症例が多いため、遺伝子解析が行われないことも少なくありません。なお、Summerskill syndromeは、BRIC1と同一疾患です。

症状

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 多く(65-85%)の症例では生後3か月までに発症し、生後3-4か月で黄疸(肌が黄色くなる)、白色便、難治性のかゆみがあらわれ、肝脾腫(肝臓や脾臓が腫れる)、成長障害を伴います。肝臓の障害からビタミンKが欠乏し、頭蓋内出血や腹腔内出血を来たすこともあります。無治療では肝臓の線維化が徐々に進行し、胆汁うっ滞性肝硬変から肝不全による死亡に至ります。病型による症状の違いとしては、以下の様なものがあります。PFIC1では、FIC1蛋白が肝臓のほか、胃、小腸、膵臓、内耳(蝸牛)、腎臓、膀胱にも発現しているため、胆汁うっ滞性肝障害の他に、下痢や膵炎、難聴をきたすこともあります。PFIC2の原因となるBSEP蛋白は、FIC1蛋白と異なり肝細胞にのみ発現するため、肝臓以外の症状をきたすことはありませんが、他の病型よりかゆみが強いです。また、肝不全への進行がとても早く、若年のうちに肝細胞癌を発症した症例も知られています。BRICでは、発作時には血清胆汁酸値が上昇した後に、次第に黄疸やかゆみが出現しますが、数週から数か月のうちに自然軽快します。黄疸発作は生涯1回しかない症例もあれば、反復する症例も存在します。

検査所見

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<血液検査>
PFIC1とPFIC2では、血液検査では直接ビリルビン、総胆汁酸およびAST/ALTの高値を呈しますが、血清コレステロール、GGTP値は上昇しません。一方、PFIC3ではGGTP値は上昇します。BRICでも発作時には同様の所見を呈しますが、発作間欠期には高ビリルビン血症はみられません。

<肝病理(肝生検)>
肝生検とは、麻酔をした後に腹部に生検針を刺し、肝臓の組織の一部を採取する検査のことです。肝疾患の原因や病態を把握し、診断や治療方法を決定するために必要な検査です。この検査でも確定診断がつかないケースもありますが、肝臓で実際に何が起こっているのかを顕微鏡で確認できる検査(肝病理)であるため、治療法を選択するのに有用な所見が得られることが多いです。

PFIC1では、胆汁うっ滞が小葉間胆管よりも毛細胆管でみられることが特徴です。肝細胞内に胆汁色素沈着顆粒が著明に認められ、肝細胞は腫大しています。電子顕微鏡では毛細胆管内にByler’s bileと呼ばれる粗雑な胆汁の顆粒が認められることがありますが、必ず認められるわけではありません。PFIC2では、巨細胞性肝炎が特徴的とされますが、全例で認められるものではありません。また、胆汁栓を伴う胆汁うっ滞がみられ、早期に線維性架橋形成や肝硬変像を呈します。免疫染色ではBSEP蛋白の発現減弱が確認され、電子顕微鏡では胆汁は無構造です。

診断基準

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Phenotype(表現型:臨床症状)とgenotype(遺伝子型:遺伝子変異)が一致した症例をPFIC/BRICと診断することが一般的です。

A. 主要症状および所見
1. 遷延する黄疸、白色便、脂肪便、肝脾腫、著明な掻痒感をみることが多い。
2. 低身長、体重増加不良、門脈圧亢進、吐下血をみることがある。

B. 検査所見
1. 血液検査所見直接ビリルビン・総胆汁酸・AST・ALTなどが高値である。1型(FIC1病)および 2型(BSEP病)ではAST・ALTの高値にもかかわらずγ-GTPが正常もしくは軽度高値、3型(MDR3病)ではγ-GTPは高値である。
2. 肝生検で下記の所見が認められる
ー 光学顕微鏡所見:1型では胆汁うっ滞が小葉間胆管よりも毛細胆管でみられやすい。2型では巨細胞性肝炎が特徴的であり、BSEP蛋白が免疫染色で観察されない。早期より肝硬変像を呈する。
ー 電子顕微鏡所見:1型では Byler bile が時に見られる。2型では胆汁は無構造。
3. 遺伝子解析ではATP8B1 (1型)、ABCB11 (2型)、ABCB4 (3型)の各遺伝子のいずれかに異常を認めることが多い。

C. 参考所見
1型では下痢、膵炎、難聴をみることがある。
2型は乳児早期に発症し、肝不全へ進行する速度が比較的早い。
3型は、発症時期は乳児期に遷延性黄疸で発症するものから妊娠中に胆石症などで発症する例まで様々であり、進展は比較的遅い。

A. 1. の症状があり、B. 3. 遺伝子解析で異常を認める場合を確定例とする。
A. の症状があるが遺伝子解析を行なわない場合は、 BSEP 染色、Byler bile、GGTP値、C. などを参考に臨床診断する。

治療法

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 胆汁うっ滞やそれによる脂溶性ビタミン欠乏に対して、内服治療を行います。PFIC2型ではフェニル酪酸ナトリウム(NaPB)の有効性が報告されており、現在、本邦においてPFIC2型に対するNaPB投与の医師主導治験が進行中です。外科的治療として、肝病変が進行していない時期に部分胆汁外瘻(胆汁を体外に出すバイパス)をおき、胆汁酸の腸管循環を遮断することで、再吸収された胆汁酸による肝へのダメージを軽減させる方法が効果をあげています。肝病変が進行した症例は肝移植の適応ですが、PFIC2型では肝移植で根治が目指せるのに対して、PFIC1型では移植後に難治性下痢、高度脂肪肝、膵炎などを合併するため、予後は必ずしも良好ではありません。

予後

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 PFIC1型では肝不全への進行は比較的ゆっくりであり肝不全に至るのは20歳台が多いです。一方、PFIC2型では進行が早く、10歳台以前に肝不全に至ります。